

「神饌(しんせん)」とは、神社や神棚にお供えする供物の事です。御饌(みけ)あるいは御贄(みにえ)とも呼ばれます。
一般家庭の神棚においては、米、塩、水の3種、もしくはそれに酒を加えた4種を「神饌」としてお供えするのが一般的です。全国の神社では、祭儀の種類や規模によってその内容は大きく異なりますが、一般的に米、酒、餅、魚、乾物、野菜、果物、塩、水などを「神饌」としてお供えします。
「神饌」をお供えするのは「神さまをもてなす」という趣旨からです。「神饌」は、元々は古代人の食生活を 反映したものが多かったのですが、時代の流れと共に、その種類や調理、盛り付け・飾り付けなどが形式化していき、また、日本人の食生活が変化していった事 もあり、時代の経過と共に神饌の内容は大きく変化していきました。
なお、調理して供える「神饌」を「熟饌」(じゅくせん)、生のままお供えする「神饌」を「生饌」(せいせん)といい、「熟饌」の調理には火打ち石などで起 こした神聖な炎(忌火(いみび))を使います。今でも神宮では忌火を使っています。
本来、「神饌」は朝夕の2回お供えしますが、地域によって異なります。祭儀の後に供えた神饌を食べる宴のことを直会(なおらい)といいます。直会には、神と同じものを食べることにより、神との親密さを増し、加護や恩恵を得ることによって自らの魂に活力を得るという意味もあります。また、これは古代より人が食べることのできないものは供えてはいなかったということでしょう。
伊勢神宮ではご鎮座以来1500年余り、毎日、朝夕2度、神々のお食事をお供えしてきました。古代の人は基本的に一日 2食だったという習慣が今も続いているのです。朝夕毎日、一日も休む事無く、調理されたお食事が神様に供されていたとは、まったく、驚かずにはいられないことです。
日本の「食の原点」は、豊かな実り、自然の恵みに感謝し、美味しく食べていただきたいという真心と、それを共にいただくという気持ちにあると思います。こうした全てに感謝する心から「いただきます」という言葉が生まれたのではないでしょうか。
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